レッドシダーの特注建具がつくる唯一無二の空間|意匠と機能を両立する建具づくりの工夫

開口部の広い木製ガラス引き戸は、建物の奥まで自然光を届け、外と中をゆるやかにつないで開放感を高めてくれます。木ならではのぬくもりに包まれ、ほっと一息つける安心感の中で、心からくつろげることでしょう。
一方で、大型の木製建具は「デザインがよければ成立する」というものではありません。特に大開口の建具の場合は、重量への対策が欠かせません。また、建物の構造計画や金物の選定など、細やかな配慮も必要です。
現在、杉野製作所では外部建具や規格品以外の特注建具の受注は承っておりません。しかしながら、木製建具にこだわる当社だからこそお伝えできる「ものづくりのポイント」があると考え、今回は過去の特注事例をご紹介いたします。設計の工夫に加えて、長く使うための品質や機能性の追求について専門的な視点を交えながら解説しますので、ぜひご覧ください。
レッドシダーで統一された外壁と建具が生み出す一体感
ご紹介するのは、店舗にレッドシダーのガラス引き戸と開き戸を採用いただいた事例です。どの扉も特注品で、建物の設計段階から深く関わらせていただきました。

エントランス正面には、外壁とデザインを揃えた開き戸を設置しました。横のラインを印象づけるため、扉中央に横向きに取り付けたハンドルも鉄工所の特注品です。

店舗とテラスの間は壁で隔てず、空間をゆるやかにつなぐ木製ガラス引き戸を採用しました。ガラス引き戸の枠部分はレッドシダーを使用し、開放感を高めつつ木のぬくもりを与えてくれます。

日中と夜間で、自然光や照明のあたり方によって印象を変えるのも、自然素材の魅力です。レッドシダーは風雨に強く、外壁材としても好まれています。特徴的な赤みがかった木肌も美しく、建具の素材としても優れています。
設計への工夫|空間をすっきり見せるための建具計画
開口部を広くとった建物は開放的ですが、同時に耐震性や耐久性への配慮も欠かせません。今回は木造でありながら、特殊な方法によって柱を極力少なくし、大開口の間取りを実現できる構造を採用しています。木製ドアを手がける杉野製作所にとって、構造の特性にあわせた建具をいかに設計するかが、重要なポイントでした。
開口部の広さと開放感、デザイン性の高さを実現するために、杉野製作所が意識した設計上の2つの工夫をご紹介します。
約5~6mの大開口を実現した構造計画

まずご紹介したいのが、こちらの木製ガラス引き戸です。店内とテラス席をガラス戸で仕切ることで、自然光が奥に入り込みます。視線も内から外に抜けやすくなり、開放的な印象になりました。

開口部は、およそ5~6mもの非常に広い幅があります。ここに、1枚あたりおよそ1m20cmの幅がある大型の木製ガラス引き戸を設置しました。
ガラス戸には、すべてペアガラスを採用しています。ペアガラスとは、2枚のガラスを重ね、間に空気やガスの層(中空層)をつくったものです。ガラスを2枚重ねているため非常に重く、今回は4人がかりでようやく持ち上げられるほどでした。この重みに耐えるため、引き戸上部の鴨居は、鉄工会社による特注製作で強度と精度を確保しています。
建具の框(かまち)と柱位置を揃えて視界を整理

こちらは、店内から屋外を見た様子です。視界を整えるために、建具の縦の線である框(かまち)と、建物の柱位置を揃えることにもこだわりました。縦のラインが揃ったことで、遮るものの少ないすっきりとした印象を高めています。

ガラス引き戸は正面に4枚、さらに90度方向に2枚を連続して配置しています。建物の角には構造上必要な間柱がありますが、柱をうまく隠すように建具の框を配置することで、外から見たときの見た目の統一感も高めました。
品質へのこだわり|大型建具を支える素材選びと丁寧なものづくり
今回の木製ガラス引き戸のような大型建具では、見た目の美しさだけでなく、長く快適に使い続けるための素材選びや製作過程の細やかな配慮が重要です。レッドシダーという素材の特性を活かしながら、重量のある建具を美しく納めるためのこだわりを紹介します。
木製建具に適したレッドシダーという素材

レッドシダーは、主に北米原産の針葉樹で雨風に強く、加工のしやすさで広く親しまれている木材です。外壁材としても人気が高く、今回の事例でも上下に角度を付けたレッドシダー材を1枚ずつ重ねて貼っていく「ベベルサイディング貼り」の手法が用いられています。
扱いやすく、特徴的な赤みがかった木肌が趣深いレッドシダーは、木製建具にも適した素材です。今回は、建物全体をレッドシダーの色味で統一したいというご要望があり、建具もレッドシダーで揃えました。
空間の統一感を高める細部の意匠

空間の一体感を高めるため、エントランスに設置した開き戸にも外壁と同じ「ベベルサイディング貼り」を用いています。1枚1枚、丁寧に貼り付けられたレッドシダー材は周囲とよく馴染み、外壁の一部のような印象です。横のラインを意識して取り付けた特注のハンドルも、よいアクセントになっています。
機能性へのこだわり|重量建具を快適に使うための工夫

断熱性が高く、快適な室内環境を支えるペアガラスは、通常の建具よりも重くなりやすいです。このような重量建具を設置する場合、杉野製作所では以下の対策を行っています。
外部建具に適した「甲丸レール」を採用
今回のように重量のある建具の場合、杉野製作所ではステンレスの「甲丸レール」を使っています。床に設置するレールの多くは溝があるタイプですが、甲丸レールは床面から丸みを帯びたレール部分が出っ張る形状です。この形状により、引き戸の戸車が外れにくく、室内にホコリや雨なども入りにくくなります。今回のように、屋外に面した場所に設置する引き戸にも最適なレールです。
「重量用戸車」で滑らかな開閉を実現
甲丸レールと組み合わせるのが、重量用のベアリング入りの戸車です。ベアリングとは回転による摩擦を抑えるための部品で、動きがスムーズになって重みのある引き戸も開閉しやすくなります。杉野製作所でよく使用しているのは「ヨコヅナ」というメーカーのステンレス製戸車です。
杉野製作所では、室内に引き戸を設置する際はレールを天井に設置する「上吊り戸」も多くご提案しています。しかし、今回のように重量のある扉は、上から吊るのは難しいため別の方法を採用します。そこで使用しているのが、「甲丸レール」とヨコヅナ製のステンレスベアリング入り戸車の組み合わせです。
重量建具だからこそこだわりたい錠前・引手選び
レールや戸車と同様にこだわりたいのが、錠前や引手の選び方です。重みのある扉では、一般的な住宅でよく使われるクレセント錠は、使用していくうちに扉の重みに負けてビスがゆるみ、外れてしまうことがあります。
杉野製作所では、ベスト製の「No.250」引き寄せ締まり錠を採用しています。扉の重みに耐える耐久性の高さと見た目のよさで、特におすすめの錠前です。
錠前だけでなく、引手にも高級感のある真鍮の素材を選びました。使用したのは、ベスト製「No.350フチナシ引手 105mm サテンニッケル」です。引手は、日常の中で使う人が直接触れる場所でもあります。存在感のある重量建具だからこそ、細部まで素材とデザインに配慮したものづくりを心がけています。
木製建具は“細部へのこだわり”で完成度が変わる

木製建具は、空間を美しく見せる設計をはじめ、扉の重みを支える構造や滑らかな開閉を支える金物選定など、意匠性と機能性の両立にさまざまな要素が組み合わさる部分です。木製ドアを単なる建具ではなく、建物全体の設計に含まれる大切な一要素として捉えることで、建物の完成度もさらに高まります。
木製ドアに真剣に向き合い、多くの実例と向き合ってきた杉野製作所だからこそ、調和を意識した設計段階からのものづくりが実現します。素材・構造・金物選びにまでこだわり抜かれた木製ドアが気になる方は、杉野製作所へお気軽にお問い合わせください。
